新世代の無機化学
最近では金属元素を含む錯体分子の多様な反応 性、構造、物性が注目されています。制癌剤である 白金錯体や徴量金属を活性中心とする酵素、生体に
関連する物質の性質、化学工学の担い手である触媒 や金属の特性を利用する材料、新しい機能を持つ新 物質の創成など、金属元素が関わる物質の果たす役
割は益々重要になっています。 |
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直線型構造の銀で連結した新規化合物 |
ミクロな結晶の物理化学
我々が日常見る物質は、ミクロの世界では全く異なった性質を示します。例えば、金は魅力的な光沢を持ち電気をよく通しますが、ミクロの世界の金は赤く、大きさによって半導体や絶縁体に変わります。このような性質の変化は、金結晶の中の電子のふるまいが変わるためです。金属や半導体に代表される無機結晶の大きさや形をミクロの世界で化学的に制御し、電子のふるまいに基づく性質を明らかにすることで、新しい機能を持った物質群が開発でき、ナノテクノロジーの発展に大きく貢献することができます。 |
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直径5.7nmの金ナノ粒子の2次元配列構造 |
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有機化学の新展開
有機化学は炭素、水素、酸素を中心とする元素か ら構成されている分子を扱う学問です。近年、金属 原子を有機化合物に組み込む研究が盛んに行われて
おり新しい化合物の設計の自由度を飛躍的に増大さ せています。これらの有機金属化合物は特異な構造 をもち、その特性を活かした新しい機能性物質の開
発が期待され、現代化学の主要テーマとなっていま す。
化学者は、美しい形の分子を創りたい、という単 純なあこがれをいつももってきました。最近になっ て、原子があたかも樹木のように配列したデンドリ
マーと呼ばれる分子も化学の力で合成されました。 構成元素をケイ素などに置き換えると光反応性、熱 分解性、導伝性などの特殊な機能を持たせることが
でき、化学の夢をふくらませています。 |
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ナノテクノロジー素子としての樹木状分子の化学構造 |
精密有機合成
有機化合物は三次元構造をもっているため、その
多くは空間における原子の配列だけが異なる立体異 性体から成っています。医薬品は立体異性本により 効力が異なるため、その合成には、立体異性体や位
置異性体などを自由に作りわける手段である精密有 機合成が不可欠です。厳密に決められたある特定の 立体構造をもつ化合物を正しい分子設計理論にもと
づいて合成するのが、有機合成化学です。 |
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